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Gridのスキルを身につける

日本オラクル

Oracle Real Application Clusters 10g 実機研修センター

 連載第1回、第2回で紹介したように、3年前のOracle 10gとともに提示された「Oracle Grid」というコンセプトは、IT業界全体が仮想化や統合へと向かう中で、企業のIT基盤を全体最適化できる技術として導入が急速に進みつつある。今回、日本オラクルは8月29日から4日間にわたり、Oracle Gridの現状とソリューションを解説する「Oracle Grid Week 2006(以下、Grid Week)」を、東京・赤坂の同社セミナールームで開催した。

コスト削減の中で効率的なIT統合基盤を提供する

 Grid Weekの最初のセッションでは、「Oracle Gridの全貌 ~全体最適化された統合インフラ基盤の必要性を探る~」というタイトルで日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ シニアマネジャーの北嶋伸安氏が、グリッド化された統合基盤が企業に必要とされるようになった背景と、それを実現するOracle Gridによる全体最適化された統合基盤の姿について紹介した。

日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループの北嶋伸安シニアマネジャー

 まず、経済産業省から出された報告書「CIOの機能と実践に関するベストプラクティス懇談会」を紹介しながら、国内企業のIT化の状況を4つのステージに分けて説明した。導入したITシステムを活用できずに不良資産化している企業群が5.7%(ステージ1)、部門単位で最適化し活用している企業群が67.8%(ステージ2)ともっとも多く、企業や組織全体で最適化し活用している企業群が24.2%(ステージ3)、サプライチェーンなどパートナー企業との間もITシステムを最適化している企業群が2.4%(ステージ4)ともっとも少なくなっている。

 ステージ2までの企業は、業務の効率化とある程度のコスト削減は実現できるが、まだ経営に対して付加価値を与えるには至らない。ステージ2と3の間には組織の壁が存在し、ステップアップするにはITシステムの進化だけではなく、組織改革も同時に実施する必要がある。さらにステージ3から4へのステップアップには、SOAによるプロセスの標準化やビジネスの可視化のためのBIが必要になり、この部分が経営に対しての付加価値となっていく。それぞれについて、1つ上のステージにアップさせるのが日本オラクルの役目であり、そのときに活躍するのがOracle Gridによる統合基盤だという。

 「調査結果でも、ステージ3、4のレベルでITを活用している企業で実際に業績が上向いていることが分かっている。今やITが経営に貢献しているのは間違いない」と北嶋氏は強調する。

ステージ2と3の間には「経営」の壁があり、ステージ3と4の間には「企業」の壁がある。その壁を取り除き、企業を1ステージ上に引き上げるのがOracle Gridの統合基盤だと北嶋氏は言う

 しかし、企業にとっては、相変わらずコスト削減への圧力は強く、ITの日常的な運用管理コストが膨れ上がる中、新規の戦略的なIT投資や技術革新への対応といった企業の成長のためのIT予算は確保が難しい傾向にある。この厳しい環境の中で、IT化ステージングのステップアップを促していくのがOracle GridによるITインフラ基盤だ。

 ITインフラ基盤に同時に求められる要件は、コスト削減、変化への柔軟性、コントロールの強化、そしてスケーラビリティと可用性の4つだ。ハードウェアだけで実施される統合基盤では、リソースの有効活用や物理的な統合による運用管理コストの低減は実現できるが、ソフトウェアレベルの運用管理は複雑なままであり、可用性を確保するには高いコストが必要となる。

 オラクルが提案する統合基盤は、ミドルウェアレベルの仮想化を実現し、システム全体の運用管理コストを削減する。また高効率でリソースを活用しながら可用性を確保し、同時に拡張性も提供されるという。

 実際のOracle Gridの活用事例として、東京証券取引所の情報系システム基盤が紹介された。かつては、負荷のピークに備えるためにシステムごとに余分なリソースを用意したり、システムごとに運用管理の状況がバラバラだったりといった状況が、Oracle Gridの導入で解決し、30%のコスト削減を実現したという。

 このOracle Gridによる統合基盤の導入は、必ずしも一気に進めなければならないというものではない。「小さく始めて、大きく育てる。単なる目先のコスト削減だけを目指すのではなく、“Net Present Value”(正味現在価値)で、企業として将来的なキャッシュフローがどう改善できるかを考えていく必要がある」と北嶋氏。さらなる具体的な施策については、近日中に発表していくという。

ウェアハウスグリッドでデータウェアハウスが変わる

 データウェアハウスの世界では、大規模な専用サーバを導入し、必要に応じてデータマートを切り出して利用するという考え方が一般的だった。最近は、データウェアハウスで扱うデータ規模が指数関数的といっていいほど、急激に増加しているという。

 「1998年には、世界で最大のデータベースの規模は4テラバイト程度でした。これが2001年には10テラバイトを超え、2005年にはYahoo!がOracleデータベースで100テラバイトを超えている。このままのペースだと、2008年には1ペタバイトを超えることになるだろう」と話すのはシステム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ 担当マネジャーの根岸徳彰氏。

日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループの根岸徳彰担当マネジャー

 最近の大規模なデータウェアハウスの特徴として、LinuxとIAサーバを利用したシステムが出てきていると説明する。従来、大規模なデータウェアハウスといえば、高価なデータウェアハウス専用機や大規模なSMPのUNIXマシンをプラットホームとするのが常だったが、Amazon.comなどでは安価なIAサーバをOracleのRAC(Real Application Clusters)技術でクラスタリング化し大規模なデータウェアハウスを実現しているという。LinuxのRAC構成であれば、従来の専用機を使った構成に比べ、同規模のシステムを構築するのに定価ベースでわずか1/3程度のコストで済むというのである。

 「従来のデータウェアハウスは、データウェアハウス本体に複数のデータマート、ETL用のサーバなど多くのサーバが必要だった。それに対して全体最適化されたBIの統合基盤を用意できれば、効率良く管理できることになる」と根岸氏。

 また、根岸氏は「データウェアハウスのすべてを統合すると考えると、旧来のものと同様に大規模なサーバが必要になると思われるかもしれないが、Oracleのウェアハウスグリッドであれば、これを仮想化したグリッド環境で実現できる。それにより、BIシステム全体で負荷を分散して効率化を図ることが可能だ」と話す。

 データウェアハウスでは、各機能ごとに負荷のピークが現れる時間帯は異なる。夜間はETL(Extract、Transform、Load)ツールが稼働し、日中はエンドユーザーからの検索要求でデータマートに負荷が集中する。このようにピークごとにマシンを用意するのではなく、グリッドで統合し必要に応じてリソースをダイナミックに割り当ててピーク処理を効率的にこなせるのが、ウェアハウスグリッドなのだ。

 もともとはSMP向けの並列処理であるParallel Queryは、RAC環境ではうまく動かないのではないかという誤解があった。可用性を重視していたOracle 8i以前のクラスタ技術のParallel Serverのころには、パフォーマンスが十分発揮できなかったということもあったかもしれないが、Oracle9i、Oracle 10gと進化したRACではインターコネクトの技術とオプティマイザの機能の革新的な進化もあり、大幅に性能が上がっているという。実際に、J2 Global Communicationという米国企業で、12ノードのRACでInternode Parallel Queryを活用し、SMPのサーバと同等の処理を低コストで実現した事例が示された。

 また、世界最大のLinuxによるデータウェアハウスの事例として、Amazon.comの事例が紹介された。Amazon.comでは、2006年現在、61テラバイト/16ノード/4CPUという構成のデータウェアハウスをLinuxのRACで運用している。ところが、以前は23テラバイト/16ノード/4CPUと35テラバイト/4ノード/4CPUという構成で運用しており、統合時にノード数が加算されて、単に20ノードとなるのではなく、16ノードのままノード数は減少したという。それだけRACによる統合、つまりグリッドによる統合が効率がいいということを証明する事例だ。

OracleのRAC技術でクラスタリング化し、Linuxによる大規模なデータウェアハウスを実現したAmazon.comの事例

 「今後はETL製品の統合も含め分析部分も統合し、全体最適化されたBIシステムをウェアハウスグリッドで実現できる」と根岸氏は自信をのぞかせていた。

グリッド化でシステム運用管理を効率化する

 北嶋氏のセッションでも指摘があったが、システムの日常的な運用管理のコストは増大化する傾向にある。運用管理面からグリッドの特長について解説したのは、システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ 担当シニアマネジャーの山本哲也氏だ。

日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループの山本哲也担当シニアマネジャー

 現状は個別システムごとに、個別の運用管理手順が存在するのが普通だ。その上にさらに新しいシステムが毎年増えるような状況で複雑性は増し、さらにコストが上昇することになる。これに対する1つの解決方法として、統合管理ツールを導入する方法がある。しかし、それのみでは、システム全体の監視については一元管理ができるものの、基盤要素のそれぞれの製品に対する細かい管理が難しいため、迅速なトラブル対応まではあまり期待できない。もう1つの方法としては、ハードウェアで仮想化して統合してしまう方法がある。ハードウェアについては一元管理が可能となるが、ソフトウェアの部分は分断化されたまま残ってしまう。

 そこでオラクルが提唱するのは、データベースの部分とアプリケーションプラットホームの部分をOracle Gridによって統合し、シンプルな運用を目指すというもの。その際に「Oracle Enterprise Manager Grid Control」を導入して管理の大部分を自動化することで、運用管理の負荷を大幅に削減できるという。

Oracle GridによるIT統合基盤の構築によって、運用管理の煩雑性から解放され、管理がシンプルになることで運用コストも削減できる

 「従来、システムごとに運用管理する専門家がいて、その人のスキルに依存して管理していた。新しいシステム基盤の導入が個別に続くと、人的リソースのさらなる投入や管理者のスキルを上げなければならなくなり、運用コストは上昇の一途をたどることとなる。ソフトウェアの管理の自動化は、こうした顧客のペインを取り除くための鍵であり、ミドルウェア・レベルで統合されたITシステム基盤と組み合わさることによって、運用コストを大幅に削減できる」と山本氏。

 また、今後は、「Grid Control」にWebサービスインタフェースを搭載することで、Oracle Gridによる自動化技術と他社管理運用ツールとの融合を加速する。ほかの管理ツールと統合できれば、ハードウェアに依存した管理項目であったり、ネットワークやストレージに至るすべてのシステム環境を効率よく運用できる高度な統合運用管理基盤が完成することになる。さらに、アプリケーションのレイヤーについても管理は進展し、サービスレベルの管理においても統合的な運用管理基盤と管理の自動化は重要となってくる。

 「Oracle GridによるITの統合基盤が構築できれば、Grid Controlにより、運用管理はシンプルになる。それにより、運用コストを削減できる」と山本氏は運用面でのグリッドの実現メリットを強調した。

来るべき日本版SOX法の施行に向けて――内部統制に寄与するGridテクノロジー

 イベント初日の最後のセッションでは、システム製品統括本部 営業推進部 担当ディレクターの西脇資哲氏が、「内部統制時代に期待がかかるグリッドテクノロジー」と題して、日本版SOX法対策として注目が高まる内部統制とGridテクノロジーの関係について紹介した。

日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 西脇資哲担当ディレクター

 まず西脇氏は、内部統制とGridテクノロジーとの関係について解説する前に、Oracleの1998年を起点として実施した「Global Single Instance(GSI)」プロジェクトと呼ばれる業務改革事例を披露した。その話によると、Oracleは全世界で展開しているビジネスの効率化とコスト削減を行うために、各地域と国でバラバラに稼働していた業務システムを統合し、一元管理する業務改革を行った。その結果、「当初目標である1000億円超のコスト削減を達成することに成功したが、副次的な効果として内部統制が強化され、SOX法への対応を非常に速い段階で完了できた」と西脇氏は統合のメリットをこう語る。そして、この業務改革によって構築したITの共通基盤が、Oracle Gridの考えに受け継がれていく。

 では、なぜ統合されたGrid環境が、企業の内部統制において有効なのだろうか?

 西脇氏は、「SOX法における最大の課題はセキュリティ対策であり、その中核はデータの保護にある。Oracle Gridによって共通化されたIT基盤が構築できれば、ほかに類を見ない強力なデータベース・セキュリティ機能をシステム全体に適用することが可能だ。たとえば、導入が容易なデータの暗号化、データベース管理者に対するアクセス制御、システムに対する監査機能といった、データ保護機能は、情報漏えいというリスクに対する有効な手段となる。加えて、構成情報の集中化による一元化されたシステムの可視化とセキュリティを含めた企業システムの運用状態を自動的にチェックするポリシーベースの運用管理機能は、内部統制の強化につながる」とそのメリットを強調する。

 さらに、「さまざまなシステムが企業に導入されている中、それらのシステムに対するID管理も内部統制の強化にはかかせない重要な課題だ。ID、パスワードだけでなく、IDに付随する属性情報までの統合管理や、SOX法に対応したレポート出力機能は監査に対応するために必要な要素だ」と西脇氏は締めくくった。

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